ぼくたちはあいをしらない
「効くだろう?
 俺の蹴りは……」

 勝也が、得意気に笑う。

「お前も能力者か……?」

 轟が、勝也に尋ねる。

「さぁな?」

 勝也が、そう言って素早く動き轟の背後に回る。

「これで終わりだ。
 スロモ野郎!」

 轟が、もう一撃轟に浴びせる。

「終わるのは、お・ま・え・だ!」

 轟が、地面を蹴り体を回転させ勝也の体を蹴り飛ばす。
 勝也の体が、宙に舞う。

「さぁ、これからはじまる殺人ショー。
 堪能してもらおうか?」

 轟の笑い混じりの言葉に勝也の意識が遠のく。

「止めろ」

 少年の声がその場に響く。
 勝也は薄れゆく意識の中、その少年の方を見た。
 近所の中学校の制服を着ている。
 ただ、それだけが認識できた。


「忠雄……来てくれたのか?」

 じいやが、そう言って少年の方を見る。

「別に助けに来たわけじゃないよ。
 ただ目の前で血が撒き散らされるのが嫌なだけ。
 誰が掃除すると思っているの?」

「忠雄お兄さん……
 茂くんが死んじゃう……」

 麻友が、そう言って涙をボロボロとこぼす。

「茂って誰?」

 忠雄が、麻友の方を見る。
 麻友が、静かに指をさす。

「あの子……
 今日から家族になるの」

「そうか……
 まぁ、致命傷ではあるけど死なないよ。
 美楽(みら)。治してあげて」

「うん」

 女の子が、静かに現れると茂の体に手を触れる。
 すると傷ついた茂の傷が一瞬で消える。

「美楽、ありがとう」

「あい」

 女の子は、頷くと数歩下がった。

「美楽お姉ちゃん!
 ありがとー!」

 麻友が、嬉しそうに笑う。

「あい」

 美楽と呼ばれる少女は、麻友の頭を撫でる。
 みゆきの頭も撫でる、そして達雄の頭も撫でた。

「えっと、美楽空気読もう。
 今は、なでなでタイムじゃないよ?」

 忠雄が、そう言って小さなため息をつくと轟が小さく笑う。

「お前、いい女だな?
 俺に犯されるか?それとも死ぬか?
 好きな方を選べ」

 轟が、そう言うと美楽が答える。

「どっちもイヤ……」

 美楽が、そう言うと轟が殺気を込めて笑う。

「じゃ、両方な!」

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