ぼくたちはあいをしらない
「お兄さん、もしかしてロリコン?
 美楽は、まだ14歳だよ?」

 忠雄が、そう言うと轟が笑う。

「まぁ、ギリギリセーフじゃね?」

 轟は、そう言って美楽の肩に手を回した。
 そして、言葉を続ける。

「なぁ?いいだろう?
 美楽。俺と大人の階段を一緒に登ろうぜ?」

「不潔……」

 美楽は、そう言って轟の手を払った。

「……つれないなぁ。
 まぁ、いずれお前は俺の虜になるさ……」

「……ならないわ。
 私は私のものなだから……」

「どうだろうな?」

 轟が、ケラケラ笑うと忠雄が、静かに言葉を放つ。

「とりあえずお兄さんさ……
 命は助けてあげるから、帰ってよ」

「偉い命令口調だな?」

「命令しようか?」

「お前に俺が従うとでも思うのか?」

 轟の言葉に忠雄がため息をつく。

「空気よ。
 あの男の周りから離れよ」

 忠雄が、そう言うと轟の表情が少しずつ変わっていく。

「息が……でき……ない……」

 すると忠雄が、顔を右手で隠しながら小さな声で言う。

「僕の能力は、絶対王政。
 どんなものでも僕の命令には逆らえない。
 なんなら命じようか?
 今すぐに……お前に死ねと!」

「わかった!
 今日のところは、帰る……」

 忠雄は、右手を顔から離すと轟の表情が元に戻る。

「じゃ、帰れ!」

 忠雄が、そう言うと轟は舌打ちを打ったあとその場を去った。

「忠雄、助かったぞ」

 じいやが、そう言うと忠雄がうなずく。

「うん」

「忠雄お兄ちゃん、ありがとう!」

 麻友が、お礼を言うとみゆきと静香、達雄が続いてお礼を言う。
 と忠雄がうなずく。

「……で、新入り君の様態はどう?」

 忠雄が、美楽に尋ねる。

「微妙……
 傷は回復したけどこのこの場合、心が傷ついている。
 何があればこんなに傷つくの?」

 美楽がそう言うと百寿が答える。

「妹が死んで、両親は蒸発。
 小さい頃からずっと家でも外でもイジメられている」

「そう……」

 美楽が、小さくうなずく。

「こんなになるまで放置か?」

 忠雄が、百寿と南の方を睨む。

「命令ですから……」

 南が、そう答えると忠雄が小さく言葉を放つ。

「だから、大人は嫌いなんだ」
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