ぼくたちはあいをしらない
「さて……
 飯を食ったら早速特訓するぞ」

 百寿が、茂の方を見て言った。

「特訓?」

 茂が首を傾げる。

「強くなりたいんだろう?」

 百寿が、小さく笑う。

「先輩!
 茂くんは、まだ入院中ですよ?」

 南が、口をとがらせる。

「大丈夫だ。
 主治医から許可を得てる」

 百寿が、そう言って茂の頭を撫でた。

「特訓って、何をするの?」

「勉強だ」

「え?」

 茂が目を丸くさせて驚く。

「お前は、勝也の時とは違って身体能力は低い。
 そういう奴は頭で戦うんだ」

 百寿の言葉に茂は、嫌そうな顔をする。

「僕、勉強嫌いだなー」

「勉強が好きな子どもは少ないわな」

 百寿が、そう言って南の方を見る。

「え?私?」

「お前、勉強とか得意そうだしな。
 南も協力しろ」

「まぁ、いいですけど……」

 南はどこか腑に落ちない様子で百寿を見る。

「喜べ茂、OKがでたぞ」

「勉強って何を勉強するの?
 国語?算数?理科?社会?英語?」

「そういうのは勉強しなくてもいい。
 勉強したって大人になれば忘れるし使わない。
 かと言って兵法とかいうのもお前のガラには合わないだろう」

「じゃ、なんの勉強をするんですか?」

 茂よりも先に南が尋ねる。

「道徳だ」

「どうとく?」

 言葉の意味が理解できない茂に百寿がゆっくりと答える。

「命の大事さだ……」

「そういうことですか……」

 百寿の言葉に南は何かを理解した様子で頷き茂は、まだ解らずにいた。

「今は、わからなくてもいい。
 だけどこれはお前にとって大事なことだ」

「わかった……
 それで強くなれるのなら勉強する」

 茂は、素直に頷いた。
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