ぼくたちはあいをしらない
「ま、俺たち能力者は世界を守る神様にも世界を破壊する魔人にでもなれるってわけだ」

 百寿が、そう言って茂の頭を撫でる。

「正義の魔人の方が、デビルマンみいたいでかっこいいなぁー」

 茂が、そう言うと百寿が少し驚く。

「デビルマンを知っているのか?
 結構古いアニメだぞ?」

「うん。
 父さんが好きで家に漫画があったんだー
 デビルマンは僕のヒーローだよ」

「そっかー
 じゃ、茂くんもデビルマンになる?」

 ゆかりが、そう言うと茂は照れ笑いを浮かべる。

「なれるかな……
 デビルマンみたいに強く」

「それは、お前次第だ」

「僕の能力はなんか、カービィみたいだけど」

 茂が、がっかりした表情でそう言うと百寿がため息混じりに言う。

「カービィは、コピーだろう?
 お前はドレインだ、少し違う」

「そっか……」

 茂は小さくうなずいた。

「先輩詳しいんですね」

 南が、目を丸くさせて驚く。

「男ならだれでも知っている話しさ……」

「そうなんですか?」

 南がゆかりに尋ねる。

「そうね。
 私でも知っている話だから結構有名なのかも……」

「私、知らないです」

 南は、がっくりと肩を落とした。

「……うん?」

「先輩どうしたんですか?」

「招かざる客が来たようだ……」

 百寿が、そう言ってタバコに火をつける。

「ここ禁煙だよ?」

 茂の言葉に百寿は、苦笑いを浮かべる。

「南、お前は茂と一緒にここでゆかりさんを護衛してくれ」

「先輩は?」

「俺は、強い方と戦う」

 百寿は、そう言って煙を吐く。
 するとその煙は、犬の形になる。

「こいつに話しかけることで俺に話ができる」

「煙犬に話しかければいいの?」

 茂の問いに百寿はうなずく。

「ああ。そうだ……
 誰かまではわからないがふたりほど侵入者が来ている。
 ひとりは、大して強くはないが……
 もうひとりは、なかなか強そうだ。
 俺は、その強い方と戦う。
 お前らは、もうひとりの方を頼む」

 百寿は、そう言うとその病室を出た。
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