ぼくたちはあいをしらない
 茂の目を抑えながらゆっくりと立ち上がる。

「大丈夫ですか?」

 南が、ゆっくりと茂に近づく。

「目が熱い……」

「ドレイン成功だな。
 おめでとう」

 博士がそう言ってパチパチと手を叩く。

「なにこれ……
 どうしてこんなに熱いの?」

 茂がそう言うと博士が、答える。

「適応すればすぐに慣れる」

「適応?出来なければどうなるの?」

「大丈夫だ。
 ドレインの能力は、全ての能力に適応する体を持っている」

 博士の言葉に茂が、目をこすりながら開く。
 すると茂の目が金色に光る。

「ちょっとマシになったかも……」

 茂がそう言うと博士が、「ほれ」と言って鏡を茂に渡した。
 すると茂は驚く。

「うわ!僕の目が黄色くなった!」

「金色(こんじき)と言え。
 そっちのほうがかっこいいだろう?」

「そうだけど……
 なんかダサい……」

「金色の目は、アニメやゲームでは強いヤツが持っている目なんだぞ?」

「そうなの?」

 茂が、南に尋ねると南は首を横に振った。

「わかりません。
 アニメとかあまりしないので……」

「南さんも知らないって言っているよー」

「それは、残念だ……」

 博士が、ため息混じりに答えた。

「見えない……
 未来が見えない……!
 なんだ?お前が俺の目を奪ったのか?
 俺の目を返せ!」

 小十郎が、そう言ってナイフを茂の方に向けそして投げた。
 茂は、そのナイフを避ける事が出来た。

「あれ?体が軽い……」

 茂は、そう呟いた。

「うむ。
 身体能力スキルも上がったようだな」

 博士が、嬉しそうに笑う。

「こうなったらゆかり!
 一緒に死ぬぞ!」

 小十郎は、そう言ってナイフを引き戻すと今度は、ゆかりの方にナイフを投げた。
 ナイフは、ゆかりに当たること無く銃声と共に地面に落とされる。
 茂は、銃声がした方を見る。
 するとそこには百寿がいた。

「そっちは勝負ついたのか?」

 博士が、百寿に尋ねる。

「いや、逃げられた」

「それは、残念……」

 博士が、息を吐いた。

「まぁ、とりあえずそいつは捕まえる。
 殺人未遂の現行犯ってやつだ」

 百寿は、そう言って小十郎の手に手錠をかけた。

「クソがクソがクソがクソが!」

 小十郎の言葉だけがその場で木霊する。
 すると茂は、小十郎の体を突き飛ばした。
 そして、それと同時に先ほど小十郎がいた場所に穴が開く。

「銃弾……か?
 この距離からだとライフルか?」

 百寿が、そう言って窓の方を見るとライフルを持った男がその場から離れる姿が見えた。

「逃げたようだな」

 博士が、そう言って茂の方を見る。

「にしてもよくわかったな?
 あの場所に人がいるなんて」

「わからないよ。
 でも、ただその人が撃たれる姿が見えたから……」

「早速能力を使いこなしているようだな。
 感心、感心」

 博士が、そう言ってうなずいた。

「未来を見る目を手に入れたのか?
 ということは今回の作戦は成功か?」

 百寿が、南の方を見る。

「はい、とりあえずその男の能力はドレイン出来たみたいですね」

「そうか……
 あとは、この消沈男から事情聴取すれば完了だな」

 百寿が、そう言って小十郎の方を見た。
 茂は、未来を見る目を手に入れた。
 灰児の確保は出来なかったが、警察の目標である小十郎の能力を茂がドレインするという目標は達成できた。

「こんばんはみらい」

 茂は、小さく呟いた。
 茂は、そう言って目を押さえる。
 そして手を離したとき茂の眼の色は黒い眼の色に戻った。
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