ぼくたちはあいをしらない
――数日後

 風舞は、ひとり携帯ゲームをしていた。
 それを見た茂が、風舞の方に近づいた。

「風舞くんも一緒に遊ぼうよ」

 風舞は、一瞬茂の方を見る。
 しかし、すぐに視線をゲームの画面に移す。

「そうだよ。
 風舞くんも遊ぼう?」

 麻友が、そう言って風舞の顔を覗き込む。

「邪魔……」

 風舞は、そう言ってゲームの画面を閉じた。
 そしてゆっくりと立ち上がるとふたりのことを無視してその場から離れた。

「なんか近づきがたいよな」

 達雄が、そう言うと茂が言葉を放つ。

「百寿さんから聞いたんだけど風舞くんもイジメられてたんだって……
 だから、心を開くことが出来ないんだと思う」

「でも、茂くんもイジメられていたんでしょ?」

「……うん」

 麻友の言葉に茂はうなずいた。

「でも、なんていうか……
 寂しいと思う」

「そっか……
 まぁ、俺の目が黒いうちはお前も風舞もイジメから護るさ……」

 達雄が、そう言って笑う。

「あ、ありがとう」

 茂が、照れ笑いを浮かべた。



――図書館


 風舞は、静香な場所に移動すると静かにゲームの画面を開く。
 音は出さない。
 それが、図書館のルール。
 風舞は、そう思ってゲームを起動させる。
 風舞が、静かにゲームをしているとそれに気づいたボランティアで来ていた柚子が声をかける。

「あ、図書館でゲームは禁止だぞ」

 柚子が、そう言うと風舞はウザそうに言葉を放つ。

「僕のことは、放っておいてよ」

「そういうわけにはいかないよ。
 図書館でのゲームはマナー違反だからね」

「……関係ないね」

「一応貴方は、私たちの孤児院の後輩なの。
 だから、注意する権利くらいあるわよ?」

「……興味ない。
 あまり僕に構うのなら殺すよ?」

「そんなこといわないの!
 私は心を読む力があるの。
 そんなこと言うとお姉さん、貴方の心を読んじゃうぞ?」

「もう一回いうよ?
 殺すよ?」

 風舞の心のトーンが低くなる。
 柚子は、静かに風舞の目を見た。
 そして、心を読んだ。

「貴方、本気なの?」

「読んだんだね……
 僕の心を……」

 風舞は、そう言ってナイフを柚子に渡す。

「バイバイ柚子さん。
 そのナイフでいっぱい殺してそのまま自殺してね」

 風舞は、小さく笑うとゆっくりと図書館を出た。
 その直後、図書館からの悲鳴が響いた。
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