ぼくたちはあいをしらない
「なに……
 これ……」

 柚子が、ナイフで近くにいた子どもたちを斬りつけた。
 それは、柚子の意思と反してその行為が行われた。
 まずは、近くにいた子どもの腕を切りつけ、そして別の子どもの肩を刺した。
 子どもたちが悲鳴をあげながらその場から逃げ去る。
 子どもが躓く、躓いた子ども柚子が乗る。
 そして、ナイフが子どもに刺さろうとしたときサッカーボールが柚子の頭に当たる。
 柚子は、涙目でその方向を見る。
 忠雄が、柚子の方を睨んでいた。

「お前、なにをしている?」

「忠雄……
 助けて……!」

 柚子が、そう言ってナイフを忠雄の方に向ける。

「なにがあった?」

 忠雄がナイフを避けながら柚子に尋ねる。

「わかんない。
 体が勝手に……!
 忠雄!逃げて!」

 忠雄が、目に手を当てて言う。

「僕が命じる!
 黒崎 柚子!
 今すぐそのナイフを放し抵抗をやめろ!」

 忠雄の眼が光る。
 しかし、柚子の手は止まらない。

「ダメ!止まらないの!
 忠雄!逃げて!」

 柚子のナイフが、忠雄の肩を斬る。

 忠雄の肩から血が溢れる。

「忠雄、大丈夫?」

 美楽が、静かに現れ忠雄の肩に触れる。

「美楽か……
 ちょっと大丈夫じゃないな……
 ヒールを頼む」

「あい」

 美楽が、忠雄の肩に手を当てる。
 そして、言葉を放つ。

「ヒール」

 すると忠雄の肩がゆっくりと温まり光を放つ。

「ありがとう」

 忠雄が、美楽に礼を言った。

「お姉ちゃん、何しているの?」

 茂が、そう言って現れた。

「茂くん?
 逃げて!」

 柚子が、そう言ってナイフを茂るに向ける。

「逃げるって?」

 状況がわからない茂は、首を傾げた。

「柚子は、何者かに操られている。
 柚子を止める方法は、ふたつ柚子を操っているモノを殺すか……
 それとも柚子を殺すか……」

「お姉ちゃんを殺すなんてダメだよ!」

 茂が、涙目で訴える。

「ああ。
 そうだな……
 だが、誰が柚子を操っているかわからないことには……」

 忠雄が、そう言って顎に手を当てて考えた。
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