ぼくたちはあいをしらない
 しかし、忠雄に考える時間なんて無かった。
 目の前でナイフを振り回す幼馴染みの柚子。
 しかも自分の意志に反し動いている。

「忠雄……
 お願い、私を殺して……!」

 柚子が涙で訴える。

「そんなこと出来るはずないだろう?」

「だってこのままじゃ私、貴方たちを殺してしまう!」

「どうする?どうする?考えろ……
 考えるんだ」

 忠雄が自問自答する。
 すると茂がゆっくりと近づく。

「茂。
 下がれ!危ないぞ!」

 忠雄が、茂に言い放つ。

「大丈夫。
 この間、マンガで読んだんだ。
 こうすれば呪いは溶けるんだよ」

 茂は、ニッコリと笑う。

「バカ……!
 マンガと現実は違う!」

 忠雄が、そう言ったが茂は首を横に降った。

「大丈夫だよ」

 茂が笑う。
 しかし、茂の頬を柚子がナイフで傷つけられた。

「茂くん逃げて!」

 柚子は、まるで操られたかのように体が動かされていた。
 そんな柚子を見て茂は腰を抜かしてしまった。
 動けない。
 柚子のナイフが茂るに刺さろうとしたとき1発の銃声が鳴った。
 その銃声とともに柚子の体が地面に叩きつけられた。

「忠雄。
 お前は、その子どもを殺す気か?」

 そう言って青年が現れる。
 忠雄は、その青年を睨みつける。

「殺したのか?柚子を……!?」

 茂は、ゆっくりと柚子の体を揺らす。

「お姉ちゃん?ねぇ、柚子お姉ちゃん!
 どうしたの?」

 頭から血を流している柚子に茂は何度も言葉を投げかける。

「美楽……
 柚子は?」

 忠雄は、ダメだと思いながらも美楽に尋ねる。

「ダメ……
 死んでる……」

「そうか……
 烏丸 鴉(からすま からす)!
 どうして、柚子を殺した?」

「そのガキが死んどけばよかったのか?
 なら、このガキを今から殺そうか?」

 鴉は、そう言って銃口を茂に向けた。

「やめろ!」

 百寿が、少し遅れてやってくる。
 そして、柚子の方を見る。

「柚子……?
 なにがあったんだ?」

 百寿は、何が起きたのか把握することが出来ない。
 それは、百寿だけではなくその場にいた忠雄ですら把握できなかったのだ。
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