ぼくたちはあいをしらない
――数日後。猫ナベ児院
茂は、静かに小さくなった柚子を見つめる。
それを気にするかのように美楽が声をかける。
「もしかして、なにか責任とか感じちゃってる?」
「僕のせいでしょ?
僕が余計なことをしたから柚子お姉ちゃんは死んだ」
「そう……なの?」
「美楽お姉ちゃんも知ってるじゃないか。
僕が漫画の真似をしなければ死ななかったんだ」
それを聞いた美楽はため息をつく。
「柚子はね、幼稚園の先生になりたかったんだ」
美楽がゆっくりと言葉をもらす。
「その夢も僕が壊しちゃったんだね」
「壊したのは茂じゃない」
美楽が、そう言って茂の隣に座り込む。
「どうして誰も僕を責めないの?」
「誰も茂が殺したなんて思っていないから。
それとも責められたいの?」
「そうじゃないけど……
達雄くんたちにどんな顔をして会えばいいかわかんない」
すると茂の背中を後ろから誰かが抱きしめる。
「どんな顔をすればいいかって?」
麻友だった。
麻友は、茂の前に回ると変顔をした。
「麻友ちゃん?」
茂が、驚いた表情で麻友を見る。
「どんな顔をすればいいかで迷っているんでしょ?
こんな顔をすればいいんだよ」
麻友が、ムンクの叫びのような表情をした。
「麻友……
また気配を消すのが上手になったわね」
美楽が、静かにそう言うと麻友が笑う。
「えっへん!それが私の取り柄です!」
「そっか……
そうね」
美楽は、麻友の頭を撫でる。
「茂くん、早くこっちにおいでよ」
「え?」
麻友が、茂の手を引っ張る。
「一緒に遊ぼうよ。
かくれんぼしようよ。
おにごっこしようよ。
だるまさんがころんだしようよ」
「……うんん」
茂は首を横に振った。
「お外寒いけど楽しいよー
はぁーってすると息が白いんだよ。
茂くんも一緒に、はぁーしようよ」
「僕は……」
茂の口が。茂の瞳が。茂の顔が悲しみで溢れる。
「ね?行こう?」
麻友は、茂を立たせると茂の手を引っ張った。
そして、外にでる。
すると静香の声が茂の耳に入る。
「だるまさんが――」
麻友が、ゆっくりと歩く。
茂の手を引っ張ってゆっくりと歩く。
静香の姿が茂の瞳に映る。
静香は、大木に頭を当てながら言葉を続けた。
「ころんだ!」
静香が、振り向きニッコリと笑う。
麻友が、ピタリと体を止める。
茂も、思わず体を止めてしまう。
静香は、再び大木の方に頭を向けると再び言葉を放つ。
「だるまさんが――」
麻友が、再び歩き始める。
すると麻友の後ろに達雄とみゆきが現れる。
「ころんだ!」
静香が、再び茂たちの方を見た。
すると達雄もみゆきも体をピタリと止める。
そして、人は更に増え、美楽、忠雄、百寿、南、じいやと人は増えた。
「だるまさんが――」
麻友と茂は、静香の真後ろに立つ。
「茂タッチだ!」
「え?」
達雄の言葉に茂は戸惑う。
「茂くんタッチ!タッチ!」
みゆきが、キャッキャとはしゃぐ。
茂は、ゆっくりと静香の肩に手を当てる。
「あは!
負けちゃった」
静香が、小さく笑った。
茂が後ろを振り向くとそこには、院の子どもたちと百寿、南、じいやがいた。
「みんな。いつのまに?」
茂は、小さく驚く。
「茂、ここにいるモノ全てがお前の家族じゃ」
じいやが、そう言って茂の頭を撫でる。
「そうだよ。
みんな家族!背負うものもはんぶんこ!
みんななかよしなんだよー」
みゆきが、そう言って茂の体を抱きしめた。
茂は、初めて思った。
「人って暖かいんだね」
茂の心からの言葉だった。
茂は、静かに小さくなった柚子を見つめる。
それを気にするかのように美楽が声をかける。
「もしかして、なにか責任とか感じちゃってる?」
「僕のせいでしょ?
僕が余計なことをしたから柚子お姉ちゃんは死んだ」
「そう……なの?」
「美楽お姉ちゃんも知ってるじゃないか。
僕が漫画の真似をしなければ死ななかったんだ」
それを聞いた美楽はため息をつく。
「柚子はね、幼稚園の先生になりたかったんだ」
美楽がゆっくりと言葉をもらす。
「その夢も僕が壊しちゃったんだね」
「壊したのは茂じゃない」
美楽が、そう言って茂の隣に座り込む。
「どうして誰も僕を責めないの?」
「誰も茂が殺したなんて思っていないから。
それとも責められたいの?」
「そうじゃないけど……
達雄くんたちにどんな顔をして会えばいいかわかんない」
すると茂の背中を後ろから誰かが抱きしめる。
「どんな顔をすればいいかって?」
麻友だった。
麻友は、茂の前に回ると変顔をした。
「麻友ちゃん?」
茂が、驚いた表情で麻友を見る。
「どんな顔をすればいいかで迷っているんでしょ?
こんな顔をすればいいんだよ」
麻友が、ムンクの叫びのような表情をした。
「麻友……
また気配を消すのが上手になったわね」
美楽が、静かにそう言うと麻友が笑う。
「えっへん!それが私の取り柄です!」
「そっか……
そうね」
美楽は、麻友の頭を撫でる。
「茂くん、早くこっちにおいでよ」
「え?」
麻友が、茂の手を引っ張る。
「一緒に遊ぼうよ。
かくれんぼしようよ。
おにごっこしようよ。
だるまさんがころんだしようよ」
「……うんん」
茂は首を横に振った。
「お外寒いけど楽しいよー
はぁーってすると息が白いんだよ。
茂くんも一緒に、はぁーしようよ」
「僕は……」
茂の口が。茂の瞳が。茂の顔が悲しみで溢れる。
「ね?行こう?」
麻友は、茂を立たせると茂の手を引っ張った。
そして、外にでる。
すると静香の声が茂の耳に入る。
「だるまさんが――」
麻友が、ゆっくりと歩く。
茂の手を引っ張ってゆっくりと歩く。
静香の姿が茂の瞳に映る。
静香は、大木に頭を当てながら言葉を続けた。
「ころんだ!」
静香が、振り向きニッコリと笑う。
麻友が、ピタリと体を止める。
茂も、思わず体を止めてしまう。
静香は、再び大木の方に頭を向けると再び言葉を放つ。
「だるまさんが――」
麻友が、再び歩き始める。
すると麻友の後ろに達雄とみゆきが現れる。
「ころんだ!」
静香が、再び茂たちの方を見た。
すると達雄もみゆきも体をピタリと止める。
そして、人は更に増え、美楽、忠雄、百寿、南、じいやと人は増えた。
「だるまさんが――」
麻友と茂は、静香の真後ろに立つ。
「茂タッチだ!」
「え?」
達雄の言葉に茂は戸惑う。
「茂くんタッチ!タッチ!」
みゆきが、キャッキャとはしゃぐ。
茂は、ゆっくりと静香の肩に手を当てる。
「あは!
負けちゃった」
静香が、小さく笑った。
茂が後ろを振り向くとそこには、院の子どもたちと百寿、南、じいやがいた。
「みんな。いつのまに?」
茂は、小さく驚く。
「茂、ここにいるモノ全てがお前の家族じゃ」
じいやが、そう言って茂の頭を撫でる。
「そうだよ。
みんな家族!背負うものもはんぶんこ!
みんななかよしなんだよー」
みゆきが、そう言って茂の体を抱きしめた。
茂は、初めて思った。
「人って暖かいんだね」
茂の心からの言葉だった。