ぼくたちはあいをしらない
 午後の授業が終わり放課後がやってくる。
 授業が終わり、終わりの会も終わり茂はランドセルを背負った。

「来島ー。
 サッカーしようぜ!」

 柾が、そう言って茂の肩を軽く叩く。

「え?いいけど……
 実は、キッカーがもう一人いるんだ。
 昼休みは来なかったけど来島なら絶対に仲良くなれる気がする」

 柾が、そう言ってひとりの少年を紹介した。

「斎藤 一です」

 一と名乗る少年は、軽く会釈する。

「あ、来島 茂です」

 茂も一に会釈した。

「よろしく」

 一が、そう言うと茂も言葉を返す。

「よろしく」

「んじゃ、あとひとり必要だな。
 3人じゃサッカーが出来ない。
 あとキーパーがひとり必要だ」

 柾がそう言うと達雄の方を見た。

「雨宮!お前に決めた!」

 柾が、そう言って達雄を指さした。

「なんで俺が?」

「自分の胸に聞いてみな」

 達雄が首を傾げるとすぐに頷いた。

「Q&Aを使えと?」

「さぁ?」

 柾が、ニヤリと笑う。

「うーん。
 まぁ、いい聞いてみよう。
 Q(きゅー)。中居はどうして俺をサッカーに誘う?
 A(あんさー)。そこの俺がいたから……
 って、そんな理由なのか?」

 達雄がひとりでそう言ってひとりで驚く。

「達雄くん今のひとりごと?」

 茂が、達雄に尋ねると達雄が答える。

「これはQ&Aと言ってどんな質問にでも、自問自答で答えを導き出せる能力なんだ」

 達雄がそう言うと茂が驚く。

「えー。
 いいなぁー、テストで100点取り放題だね」

 茂の言葉に達雄は、苦笑いを浮かべる。

「声に出さなければ答えが出ないから試験には使えないんだ。
 試験中は静かに……が、鉄則だからね」

「そっか……」

 茂が、ゆっくりと頷いた。

「ってなわけで、雨宮。
 お前キーパーな?」

「待て、俺はまだサッカーをするなんてひとことも……」

「大丈夫。
 お前なら、一流のキーパーになれる!」

「……はぁ。
 わかった。
 茂ひとりにキーパーをやらすのは可愛そうだしな。
 付きあおう」

「へへへへ。
 流石、雨宮。
 話がわかるな!」

 柾は、嬉しそうに笑った。
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