ぼくたちはあいをしらない
 すると茂の心に俺の声が小さく響く。

「殺さなければ、ずっとコイツにイジメられ続けるぞ?」

 茂は、小さくうなずく。

「うん。
 そうかもしれないけどそうじゃないかもしれない」

 茂がそう言うと俺は小さくうなずく。

「なら、構わない。
 誰も殺さないでおこう」

 俺は、そう言うと山崎の方を見る。

「今度僕に手を出したら……
 殺すからな?
 お前らも同じだからな?」

 俺は、そう言うと茂の周りが再び暗くなる。
 薄暗い部屋に人影らしきものが近づいてくる。
 その人影は、静かに言葉を放つ。

「なにかあったら、すぐに俺を呼べ。
 いつでも俺がお前を護ってやる」

「……俺さんでいいのかな?
 本当にいつでも護ってくれるの?」

「ああ。
 それと俺は俺さんじゃない。
 俺の名前は、勝也。
 来島 勝也だ。
 覚えておけ……」

「うん!
 勝也君だね!」

「呼び捨てでいいぜ?
 俺もお前のことを茂と呼ぶからな?」

「わかった!」

 暗くなった部屋の一部が淡く光る。

「さぁ交代の時間だ」

「交代?」

「ああ。
 俺から茂へ変わる時間だ。
 妹のミルクを早くやってこい」

「うん!」


 茂は、嬉しそうに頷いた。
 勝也は、バタフライナイフを折りたたみそれをポケットに入れると茂と体を交代させた。
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