ぼくたちはあいをしらない
――公園

 柾が、サッカーボールの上に座りぼーっとしていた。
 自分が、轟に余計なことを言わなければ麻友は死ななかった。
 幼いながらに柾は、一生懸命悩んでいた。

「そんなことない」

 誰かにそう言って欲しかった。

「そんなことない」

 でも、いざ言われると心が苦しくなった。
 責められても慰められても柾の心は苦しいだけだった。
 つらいだけだった。

「……あ」

 子どもの声が柾の耳の中に入る。
 柾は、その声がする方に視線を送る。

「茂……
 あとお姉さんたち誰?」

 柾が、驚いた顔で3人の方を見る。

「私もお姉さんにいれてもらえるかな?
 私は、田村ゆかりよ」

「私は、村野 美楽」

「ゆかりさんと美楽さん……?」

「うん」

 美楽が頷く。

「君が、柾くん?」

 ゆかりが、柾に尋ねると柾はうなずいた。

「うん」

「そう……
 サッカー好きなの?」

「うん」

 柾は頷く、しかし元気はない。

「じゃ、お姉さんとサッカーする?」

 美楽が、そう言って笑うとゆかりが口を尖らせる。

「えー。
 サッカーなんて私できないよー
 手芸にしよ?しゅ・げ・い!」

「手芸って何?」

 柾が、そう尋ねるとゆかりが笑う。

「大人の遊び……」

 ゆかりが、冗談ぽく笑った。

「僕、手芸は大人になってからにするよ」

「そう、残念……」

 ゆかりは、残念そうにため息をつく。

「……中居くん」

 茂が、小さな声を出す。

「来島……」

 それに反応するかのように柾が言葉を吐く。

「久しぶり……でもないか……」

 茂が苦笑いを浮かべた。
 すると柾も苦笑いを浮かべた。

「久しぶりのようで久しぶりじゃないな……」

 柾が、そう言うと茂は頷く。

「うん」

 沈黙。
 静寂。

 ふたりから一切の音が消えた。

「サッカーしよう」

 茂が、そう言った。
 すると柾は頷く。

「ああ……
 でも、美楽さんはダメだ」

「どうして?」

 美楽が首を傾げる。

「スカート履いてるから……
 サッカーをするとパンツが見えちゃうぞ」

 柾は、そう言ってニッコリと笑った。
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