ぼくたちはあいをしらない
冷たい土にそびえ立つ桜の木々。
花は愚か芽すら出てはいない。
12月31日の冬。
「寒いね……」
みゆきが、そう言って白い息を吐く。
「うん」
茂が静かに頷く。
「冬だからな」
達雄が、そう言うと忠雄がため息をつく。
「じゃ、赤ちゃんを私に……」
美楽が、そう言ってゆかりから赤ん坊を預かる。
「本当に治るの?」
ゆかりが心配そうに美楽に尋ねる。
「わからない。
でも、桜の奇跡を信じて……」
「うん」
ゆかりは、静かに頷き胸元に手を当て祈った。
「桜の力よ。
今、私に力を貸して……
この子に未来を……
そして、希望を与えよ!」
美楽が、そう言うと目が赤く光る。
そして、それと同時に桜の木も輝く。
その場にあった数十本の桜が一瞬で咲く。
桜の花びらが舞う。
桜の花びらが赤ん坊の顔に集まり桜の花びらが地面に落ちたとき……
真ん中にひとつだけあった目が赤ん坊に両目を授ける。
「赤ちゃんの目がふたつになったよ!」
みゆきが声を出す。
「忠雄……
赤ちゃんよろしく」
美楽は、そう言って忠雄に赤ん坊を渡すとそのまま倒れた。
「美楽!」
百寿が、美楽の体を受け止める。
「赤ちゃん治った?」
「ああ。
ちゃんと目がふたつあるぞ」
美楽の問いに百寿が答える。
「そう、よかった……」
「もしかしてお前……目が……?」
忠雄が美楽の目を見る。
美楽の目に光が宿っていない。
「うん。今は見えない。
でも、自分にヒールを唱え続ければ数日で治ると思う」
「赤ちゃん!
私の赤ちゃんが!」
ゆかりが、目に涙を浮かべて赤ん坊の方を見る。
「忠雄、赤ちゃんをゆかりさんに……」
美楽が、そう言うと忠雄はゆかりに赤ん坊を渡した。
「ありがとう。
本当にありがとう……」
ゆかりが、涙を流してお礼を言った。
「赤ちゃんに名前をつけてあげないと……」
静香が、そう言うとゆかりが小さく泣きそして笑う。
「この子の名前は、万桜。
万の桜の花びらに命をつないでもらった女の子。
万の人に愛される桜のようになるように願いを込めて……
万桜……」
ゆかりが、そう言うと桜の花を見上げた。
花は愚か芽すら出てはいない。
12月31日の冬。
「寒いね……」
みゆきが、そう言って白い息を吐く。
「うん」
茂が静かに頷く。
「冬だからな」
達雄が、そう言うと忠雄がため息をつく。
「じゃ、赤ちゃんを私に……」
美楽が、そう言ってゆかりから赤ん坊を預かる。
「本当に治るの?」
ゆかりが心配そうに美楽に尋ねる。
「わからない。
でも、桜の奇跡を信じて……」
「うん」
ゆかりは、静かに頷き胸元に手を当て祈った。
「桜の力よ。
今、私に力を貸して……
この子に未来を……
そして、希望を与えよ!」
美楽が、そう言うと目が赤く光る。
そして、それと同時に桜の木も輝く。
その場にあった数十本の桜が一瞬で咲く。
桜の花びらが舞う。
桜の花びらが赤ん坊の顔に集まり桜の花びらが地面に落ちたとき……
真ん中にひとつだけあった目が赤ん坊に両目を授ける。
「赤ちゃんの目がふたつになったよ!」
みゆきが声を出す。
「忠雄……
赤ちゃんよろしく」
美楽は、そう言って忠雄に赤ん坊を渡すとそのまま倒れた。
「美楽!」
百寿が、美楽の体を受け止める。
「赤ちゃん治った?」
「ああ。
ちゃんと目がふたつあるぞ」
美楽の問いに百寿が答える。
「そう、よかった……」
「もしかしてお前……目が……?」
忠雄が美楽の目を見る。
美楽の目に光が宿っていない。
「うん。今は見えない。
でも、自分にヒールを唱え続ければ数日で治ると思う」
「赤ちゃん!
私の赤ちゃんが!」
ゆかりが、目に涙を浮かべて赤ん坊の方を見る。
「忠雄、赤ちゃんをゆかりさんに……」
美楽が、そう言うと忠雄はゆかりに赤ん坊を渡した。
「ありがとう。
本当にありがとう……」
ゆかりが、涙を流してお礼を言った。
「赤ちゃんに名前をつけてあげないと……」
静香が、そう言うとゆかりが小さく泣きそして笑う。
「この子の名前は、万桜。
万の桜の花びらに命をつないでもらった女の子。
万の人に愛される桜のようになるように願いを込めて……
万桜……」
ゆかりが、そう言うと桜の花を見上げた。