ぼくたちはあいをしらない
「八百屋さんの次は酒屋さん」

 静香が、そう言って足を酒屋の方に向ける。

「え?お酒買うの?」

 茂が、そう言うと静香がうなずく。

「じいやに頼まれたから……」

「そっか。
 未成年なのに酒、買えるんだな」

 柾が、そう言うと静香がうなずく。

「本当は、ダメだけどね……」

「……だよな」

 柾は、苦笑いを浮かべた。

「でも、酒屋さんとは知り合いだし特別……」

「それ、静香ちゃんが言う台詞じゃないよね」

 茂は、小さく笑った。

「あー!
 静香がナンパにあってる!」

 ポニーテールの可愛らしい女の子が静香たちに小走りで近づいてくる。

「あ、みゆきちゃん……」

 静香が声を上げる。

「……って、茂くんと柾くんじゃん」

 ポニーテールの少女は、黄昏 みゆき。
 お転婆で明るかった少女は、高校生でありながら小学生にピアノを教えるバイトをする立派な女の子に成長していた。

「今、バイトの帰り?」

 茂が、みゆきに尋ねる。

「うん!
 今日も立派に勤めてきたであります!」

 みゆきは、そう言って敬礼した。

「お疲れ様」

 茂が、そう言うとみゆきが返事する。

「ありがと。
 で、貴方たちこんなところで何してるの?」

「これから、お酒を買おうと思っているの」

 静香が、そう言うとみゆきが驚く。

「え?未成年のお酒は法律で禁止されてるんだよー」

「でも、じいやが飲むから……」

「購入もダメ!
 売った酒屋さんも潰れちゃうよー
 甘酒にしなさい!」

 みゆきがそう言うと静香がうなずく。

「そうね……
 甘酒にしましょう!
 本当は、奮発して魔王を買おうと思っていたけれど……」

「そんな高級酒あのじじいにはもったいないよ」

 みゆきがケラケラ笑う。

「誰がじじいじゃ!
 ワシは、まだまだそんな歳じゃないぞ!」

 じいやが、そう言って茂たちの前に現れた。
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