ぼくたちはあいをしらない

　風舞は、制服を着てウォークマンを聞きながら街を歩いていた。
　すると同じ年くらいの少年たちが前に塞がる。

「ちょっと待った！」

　少年たちは、風舞の肩を押した。

「何？」

　風舞は、怪訝そうなかおでその少年たちの方を見た。

「お前、金持ってるだろう？」

「ないよ」

　風舞は、その少年たちにひとことそう言って返した。

「無ければ持ってこいや！
　持ってこなければどうなるかわかるだろう？」

「どうなるの？」

「わかんないのか？
　コイツ馬鹿じゃね？」

　少年は、そう言って仲間たちと笑い合う。

「馬鹿なのは君たちだよ」

「なんだと？」

「その制服、鈴城高校でしょ？
　顔も覚えたし学校に言いつけるよ？」

「バーカ。俺の名前は橋本　一樹（はしもと　かずき）。
　俺の親国会議員なんだ！
　そんなの握りつぶすに決まってるだろ！」

　国会議員の息子で、橋本　一樹と名乗る少年が風舞にナイフをチラつかせた。

「コイツビビって声もでないでやんのー」

　別の少年が、そう言って笑う。

「バカは死ななきゃ治んないって言うけれど……
　死んでも治りそうもないよね」

　風舞が、そう言って小さく笑う。

「お前、死にたいのか？」

「バカだね。
　死ぬのは君たちの方だよ！」

　風舞がそう言って笑う。
　する一揆たちが、風舞を襲う。
　周りの人たちは、遠巻きで見ているだけで誰も助けようとしない。
　風舞は、ため息をつく。
　そして、風舞は指先を一樹の方に向ける。

「なにしてんだお前？」

　一樹が、そう言うと風舞が笑う。

「ねぇ、ヒーローごっこしよう。
　君たちが悪者ね」

　風舞は、そう言って楽しそうに笑った。