ぼくたちはあいをしらない
　一樹は、恐怖した。
　風舞のただならぬオーラに恐怖した。

「怖いのかい？
　僕のことが……」

　風舞が笑う。

「俺がビビると思っているのか！
　お前なんて怖くない！」

　一樹が、涙をこぼしながらそう言ってナイフを振り回し始めた。
　一樹の仲間たちは、風舞に背中を向けて逃げ出した。
　しかしその動きはゆっくりとスローモーションのようにしか前に進めない。

「逃すかバーカ」

　サングラスを掛けた青年が、そう言って笑う。

「お前誰だよ！」

　動きを止められた少年のひとりがそういった。
　すると青年がこう答える。

「春村　轟だよ。
　お前は、俺の可愛い弟分にケンカを売った。
　バカだねぇ。勝てるとでも思ったのか？
　これだから、雑魚は……」

「俺たちに何をした」

「お前たちの足をスローモーションって能力で鈍足にした。
　これで、お前たちの恐怖に歪む顔を拝みながら殺すことが出来る」

「殺す……？やめてくれ！
　俺は、ただ一樹に合わせて……」

　それを聞いた風舞が、ため息をつく。

「ノリでやったんだ？」

「ああ。だから、助けてくれ！」

　風舞の目が、殺意に満ちる。

「ノリでなら人を傷つけてもいいんだ？」

「これは、暴力だ！殺人未遂だ！
　警察に……いや、親父に言ってお前らをここで暮らせないようにしてやる！」

　一樹が、そう言って笑いだす。

「なら、僕は今ここで君を殺そう。
　死人に口なしって言うしね。
　どうせ未成年を理由になんでもやっても許されると思っていたんじゃないの？」

「そうだよ！
　なんか問題あるのかよ！」

「じゃ、やってもらおうかな」

　風舞は、そう言って一樹の目を見た。
　一樹の意識がゆっくりと遠くなっていくのを感じた。
　そして、これから恐怖の時間がはじまる殺人ショーが。
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