ぼくたちはあいをしらない
「そっか……
 生きていたんだ……」

 静香が、小さくうなずく。

「でも、一枚噛んでいるってどういうこと?」

 達雄の質問に百寿が答える。

「傍に轟の姿が防犯カメラに写っていてな……
 そして、この日……
 風舞を張っていた刑事が何人か死体で発見された……」

「それってもしかして……」

 達雄が何かを悟り百寿が言葉を続ける。。

「ああ。
 風舞と轟は組んでいる。
 そして、もう一つ残念な知らせがある」

「残念な知らせ?」

 茂が心配そうな表情で百寿を見る。

「杉山 小十郎を覚えているか?」

 百寿の言葉に茂たちの表情が曇る。

「ゆかりさんの元旦那の?」

 みゆきが、小さな声でそういった。

「ああ。
 小十郎が、脱獄した」

「……え?」

 茂には一瞬百寿の言っている言葉がわからなかった。

「恐らく組織的な犯行だと思われます」

 南が言葉を付け足す。

「組織……だと?」

 達雄がそう言うと南が声を低くしていった。

「自らをテオスと名乗るギフト所持者の組織です。
 粗悪な集団として裏社会では名の知れた組織です」

「テオス……
 古代ギリシャ語で神か……」

 達雄が顎に手を当てる。

「ああ。
 つまりだ。
 また、どうとくのじかんだ。
 小十郎は、またゆかりさんと万桜ちゃんを狙ってくる。
 お前らは、またゆかりさんと万桜ちゃんの護衛を頼みたい」

「わかった」

 達雄が返事をした。

「ふふふふふ……
 大きくなった私たち。
 そして、能力を失った小十郎。
 勝敗はもう決まっているわね」

 みゆきが、そう言って得意気に笑った。
< 72 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop