ぼくたちはあいをしらない
 閑静なる公園。
 子供の声のみが木霊する。

「お母さん」

 少女がひとり大人の女性に声の隣に座る。

「あら、万桜どうしたの?」

「『どうしたの?』じゃないよ。
 茂お兄ちゃんたち、もうすぐくるよ」

「え?あ……そうね」

 そう言ってその女性は怯えた表情を浮かべる。
 女性の名前は、田村 ゆかり。
 そして、少女の名前は、田村 万桜。
 ふたりは、親子だ。

「そんなにお父さん怖い人だったの?」

「あんな人をお父さんって呼ばないで……」

 ゆかりは、静かに震える。

「ゆかりさん、みっけ!」

 みゆきが、そう言って茂たちもその場に合流する。

「あ、うん……」

 ゆかりが、小さく苦笑いを浮かべる。

「万桜ちゃん、また大きくなった?」

 静香が、そう言って万桜の頭を撫でる。

「静香お姉ちゃんは、大きくなんないね」

 万桜が、そう言って静香の胸を正面から触る。

「あら、万桜ちゃん言うわね?
 そんなこと言う万桜ちゃんにひんぬービームをお見舞いするぞ」

 静香が、そう言ってクスリと笑う。

「ひんぬビーム?」

 万桜が、首を傾げる。

「ふふふふ……
 このビームを浴びると胸が成長しなくなるのよ」

 静香が、そう言うと万桜の胸を掴む。
 そして、静香はショックを受ける。

「どうしたんだ?
 静香、泣きそうな顔して……」

 達雄が、そう言うと静香が泣きそうな顔で答える。

「この子、私より胸がある……」

 静香の声の目に涙が光った。
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