ぼくたちはあいをしらない
「なんか楽しそうな話をしているじゃねぇか」

 そう言ってサングラスを掛けた青年が、現れる。

「轟か……?」

 百寿が、スーツの中にある銃に手を当てる。

「久しぶりだな。
 百寿……だが、今日はお前らに用はない」

「じゃ、なんのようだ?」

 達雄が、そう尋ねると轟が笑う。

「俺に聞くのか?
 相変わらず成長しないんだな」

 達雄は、少し間を開けて自問自答する。

「Q.なぜ、轟が来た?
 A.小十郎を殺す……だと?」

 達雄がそう言うと轟の方を見る。

「どうして殺すんだ?
 仲間じゃなかったのか?」

 すると轟がため息をつく。

「聴かなければわからないのか?
 お前の能力はそんなものか?」

「く……
 Q.轟はどうして小十郎を殺す。
 A.裏切り」

 達雄が舌打ちを売ったあと静かに答える。
 達雄の能力、Q&A。
 それは、自問自答することにより答えがわかるというシンプルなものだった。

「相変わらず、お前のひとりごとには寒気がするな!」

「……裏切りってどういうこと?」

 みゆきが、そう言うと轟が笑う。

「さぁ?どういうことだろうな?」

 轟は、そう言って素早く歩き万桜の背後に立つ。
 そして、万桜の体を持ち上げる。

「え?」

「こういうことだ」

 轟は、そう言って万桜を持ったまま大きく後退する。

「な……」

 百寿は、そう言ってその銃を抜こうとするが動きが鈍い。
 轟のスローモーションの能力でこの場にいた全てのモノの動きが鈍くなっているのだ。

「まぁ、ここでお前らを殺しても意味は無いからな。
 とりあえず生かしておてやるよ。
 タネさんの寛大なる処置に感謝するんだな!」

 轟は、そう言うと万桜を連れてその場から姿を消した。
 万桜も何が起きたか解らず、またスローモーションの能力で動きを封じられていた。
 誰も何も出来ないまま万桜は連れさらわれたのだ。
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