ぼくたちはあいをしらない
――西野邸

 静かなる部屋に時計の振り子の音が響く。

「この子が、プレゼントを持っているの?」

 タネが静かに笑う。
 目隠しをされた万桜が、その声に反応して怯える。

「プレゼント?
 私何も持ってないよ……」

 万桜は、震える声を抑えながらそう言った。

「喋るな」

 轟が、万桜の頭を掴み耳元でささやく。
 万桜は、その轟の声に殺意を感じた。
 生まれてはじめての経験。
 殺される側に立つはじめての経験。
 万桜は、死を感じた。
 だけど覚悟なんて出来なかった。
 万桜は、その不安に押しつぶされそうになりながら息をする。
 しかし、うまく息ができない。

「ひっく……」

 万桜の呼吸が、荒くなる。

「あらあら。
 過呼吸になちゃった?」

 タネが、そう言ってクスリと笑う。

「死……感じた?
 万桜、怖い……?怖い‥…?
 でも、怖いの中に希望混じってる?」

 レテが、小さな声でそう言うと万桜の耳元でささやく。

「希望だ?
 絶望の間違いだろう?」

 轟は、そう言って万桜の突き飛ばす。
 万桜は、そのままバランスを崩し地面に顔をぶつける。

「来たよ。
 この子にとっての希望?が……」

「なんで疑問形なんだ?」

 轟が、そう言って大きく後退する。

「あら。
 久しぶりね。
 小十郎」

 タネが、そう言って静かに笑った。

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