ぼくたちはあいをしらない
――警察署特殊課

 ひんやりとした空気の中ひとりの少年が、百寿に尋ねる。

「万桜ちゃんが、狙われた理由はわかったのか?」

「いや……
 俺の方では、確認が取れていない」

 百寿が、そう言うと傍にいた青年がため息をつく。

「相変わらず無能だな。
 こっちでは、もうその情報は掴んだ」

「ほう」

 少年は、そう言ってその青年の方を見る。
 少年の名前は、御茶ノ水 博士。
 そして、そばにいる青年の名前は、烏丸 鴉。
 10年過ぎてふたりは大人っぽくなっていた。

「万桜は、プレゼントのギフト能力者だ」

「プレゼントだと?」

 百寿が声を震わせる。
 鴉が、そう言って窓の外に視線を移す。

「ちなみに10年前轟に殺された、麻友ってヤツもプレゼントの能力者だったらしい」

 博士が顎に手を当てて静かに言った。

「プレゼント……
 殺した相手に幸福かなんらかのギフト能力を付与される能力者か……」

「麻友もそうだったのか……?
 じゃ、轟もなんらかの能力を得たのか?」

 百寿の問いに鴉が答える。

「さぁな……
 能力を使った気配はないからな。
 なんらかの幸せなことがあったんじゃないのか?」

 鴉は、面倒くさそうに答える。

「そうか……」

 百寿は、静かにうなずいた。

「とりあえず、万桜ちゃんの護衛を増やしたほうがいいな」

「ああ……
 そうだな……」

 百寿が、うなずいた。

「話は変わるが、南。
 お前のところに親戚が来るんだって?」

 博士が、話を変えるかのように南に言った。

「あ、はい……
 親戚が、こっちの高校に行きたいって言っていて……
 それで、私の家に来ることになりました。
 暫く、その子とマンションでふたり生活です」

「そうか……
 まぁ、なんだ。
 同居人が増えるのならこれから色々入用だろう?
 家族手当っていうか……
 あれだ。
 給料が、あがらないか上の方に申請しとく」

 博士が、そう言って笑う。

「いいんですか?」

 南の顔に笑みが浮かぶ。

「ああ。
 南、頑張ってくれているしな」

「ありがとうございます」

 南は、ペコリと頭を下げてお礼を言った。

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