ぼくたちはあいをしらない
「ああ……
 この空気のひんやりとした感じ……
 いいねぇー」

 男がひとり学校の裏山にて大きな声で言う。

「南野……灰児?」

 その場所に茂が思わず声を出す。

「ああ?
 なんだ?お前……?
 誰だ?」

 そう言ったのは、南野 灰児。
 ゆかりが病院に入院していた頃、小十郎と共に病院を襲撃。
 その際に大量の女の人を誘拐して行方をくらました男だ。
 茂は、写真でしか見たことがないが灰児のことはすぐに理解した。
 灰児のそばには若い女性が、裸で横になっていた。
 その女性が、茂の顔を見ると力なさ気に言う。

「助けて」

 茂は、構える。

「お?お前、俺とやるってか?
 この女の争奪戦ってやつだな?
 お前が勝てば、この女を好きにしていい。
 だが、俺が勝てばそこの女を俺の好きにさせてもらうぞ?」

 灰児がそう言った瞬間、茂は後ろを振り向いた。
 するとそこには、自由が立っていた。
 怯えた目で灰児の方を見ていた。

「……北さん?」

 茂が、小さく声を出すと今度は苦しみだす。

「バーカ。
 戦闘中に余所見すんじゃねぇ!」

 灰児は、そう言ってキリを濃縮させ茂の体の周りの霧の濃度をあげ酸素を減らした。

「苦しい……」

 茂が、そう声を出すと心のなかにある白い何かが光る。
 そして、その光が一瞬で辺りを包み込み茂は懐かしい感覚を思い出す。

「この感覚は……
 勝也?」

 茂が、そう言った時、もう茂は心の策の中にいた。

「はい、俺参上!」

 勝也が、そう言ってニッコリと笑う。

「霧の濃度が戻されただと?」

 灰児が、機嫌悪そうにそう言った。

「俺の能力さ……
 お前の能力は知っている。
 霧を自在に操るんだろう?」

 勝也がそう言うとそのまま灰児を蹴った。

「俺にダメージを与えれるのか?
 お前、なんの能力者だ?」

 灰児は、自分の体を霧状に変えれる力を持つ。
 つまり基本的に物理的な攻撃は灰児には効かないのだ。

「俺の能力は、相手の能力を無効化にさせることができる。
 よってお前みたいな能力者の能力は効かない」

 勝也が、そう言って笑うともう一撃灰児にダメージを与えた。
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