ぼくたちはあいをしらない
 自由は、怯えて身動きがとれない。
 ただ震えるばかり。

「その子を離せ!」

 勝也が、怒鳴る。

「おっと。
 お前は、俺の相手だ……そうだろう?」

 灰児が、そう言ってナイフを勝也に近づける。
 しかし、そのナイフは1発の銃声とともに弾かれる。

「ああん?」

「轟、灰児!
 お前らは今ここで捕まえてやる!」

 百寿が、現れた。

「百寿か……?
 老けたな」

 灰児が余裕の笑みを浮かべている。

「お前は変わらないな」

 百寿が、そう言うと灰児が笑う。

「不老不死のヴァンパイアだからな」

「じゃ、ここで俺が仕留めてやろうか?」

 百寿が、もう1発銃弾を放ち灰児の肩に命中させる。

「無駄だぜ?
 なにせ俺は霧だからな!」

「そうだったな……
 だが、目的は達成できた」

 勝也が、一瞬の隙を狙って灰児から離れた。

「ほう……
 できるようになったじゃねぇか」

 灰児が、そう言って笑う。

「……ククク。
 灰児、ここはお前に任せたぞ。
 俺はこの女をタネさんのところに運ぶ。
 この女は、プレゼントのギフト所持者だ!」

「ほう……
 じゃ、タネさんのところに持っていくのか?」

「そうだな。
 でもまぁ、その前にタップリと遊んでからな!」

 轟がそう言って大きく後退し姿を消した。

「あとで合流する」

 灰児が、そう言って百寿の方を見た。

「勝也!お前は轟を追え!」

「お前ひとりでこいつと戦う気か‥…?」

 勝也が、百寿に尋ねた。

「ああ、俺にはアイツを倒す術がある」

「わかった。
 信じる」

 勝也は、そう言って轟を追った。

「クククク。
 俺を倒す術だと?」

「ああ。
 これさ……」

 百寿は、そう言ってカバンからガソリンが入った瓶を灰児に向かって投げた。
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