ぼくたちはあいをしらない
「ち……」

 しつこいやつだ。
 轟がそう言って足を止める。

「さぁ、諦めて北を返せ」

 勝也が、そう言って轟を睨む。

「嫌だね!
 こいつは、プレゼントもちなんだ。
 殺せばギフトを手に入れれる。
 こんな美味しいヤツ放っておけるか?
 殺し方は、どんな方法でもいい。
 たっぷりと味わってからでもいいし、拷問をかけて殺すのもいい。
 あぁ、あれは楽しかった。
 ロシアンルーレット。
 ナイフを刺して誰が刺したナイフで死ぬか勝負するんだ。
 殺せた奴が勝利で能力を得ることが出来る。
 あ、そうだ。
 俺とお前でコイツでそれやらないか?」

 轟の言葉に勝也は苛立ちを覚える。
 だけど残酷だとは思わなかった。

「何を言っている?」

 なぜなら、自分のほうがもっと残酷になれるからだ……

「あ、でも半日待ってくれないか?
 その間にコイツといっぱい愛を語り合ってからさ……」

「愛だと?」

 勝也は、轟の言葉に思わず笑う。

「ああん?
 なにがおかしい?」

 轟が、苛立つ。

「お前から愛ってことばがでるなんてな……」

 勝也がそう言うと轟が、言葉を放つ。

「もういい。
 お前死ねよ」

 轟が、そう言ってナイフを投げる。
 しかし、投げた先には轟はいなかった。

「ああん?勝也どこに行った?」

 ドスン。

 轟の頭に強い打撃が与えられる。

「いつ……のまに……?」

 轟が、朦朧とする意識の中勝也に尋ねた。

「お前の能力は、視界に入ったモノの動きを鈍らせる。
 お前に動きを止められたあの日。
 街の時計は時間を刻んでいた。
 お前の敗因は、俺を見た瞬間に俺を殺さなかったことだ」

「くそが……」

「茂変わるぞ。
 ドレインを使え」

「うん」

 一瞬で、勝也と茂の人格が変わる。

「茂くん?」

 ようやく開放された自由が、茂のそばに寄る。
 しかし、轟がダウンしている時ではないと能力を奪えない。
 なので、自由にニッコリと笑顔を向けてから言葉を放つ。

「ドレイン」

「やめろ……
 やめろ!
 やめろーーーー!!」

 轟の叫び声が、その場に響く。

「なんだ……
 もうケリはついているじゃないか」

 そう言って現れた青年は鴉だった。

「鴉……さん?」

 茂が、小さな声を出し驚く。

「とりあえず、春村 轟。
 確保だ」

 轟は、鴉により逮捕され後日尋問を受けることとなる。
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