ぼくたちはあいをしらない
 その威嚇射撃を合図に複数の警官が現れ、勝也の周りを囲む。

「なんだよ?
 お前ら……?
 ガキひとりにこの人数って……」

 黒い服を着た男が、そう言うと百寿が睨む。

「とりあえず、お前ら3人はその赤ん坊を殺した殺人容疑で逮捕だ」

 数名の警官にそのまま黒い服を着た男が拘束された。
 他の警官は、勝也を捕まえようとしたが勝也はそれを避けた。

「お前らじゃ無理だ……」

 百寿が、そう言ってタバコに火をつけた。
 するとそのタバコの煙は一気に勝也の足元を包み込んだ。

「なんだこれ?
 煙が下に……?」

 勝也は、そう言って足をあげようとするが足が動かない。

「動けないだろう?
 今のその煙の重さは、300キロくらいだ。
 まだまだ重くすることもできるがどうする?
 あがいてみるか?」

 百寿の言葉に勝也は首を横に振って両手を上げた。

「わかった。
 降参しよう」

「お前の名前は?」

「来島 茂」

「それはもうひとつの人格だろう?
 お前の人格の名前は?」

「俺か?
 俺の名前は、勝也だ」

「勝也だな?了解。
 なら、茂に人格を戻してくれないか?
 お前が相手だとこっちも気を抜くことができない」

 百寿が、そう言うと勝也がため息混じりに返事をした。

「わかった」

 百寿は、そう言ってゆっくりと目を閉じた。
 そして目を開けたとき人格が勝也から茂へと変わった。
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