聖者の行進
悲しみと怒り
シオリは苦しかった。大好きな彼である和志からの束縛と放置に悩んでいた。
付き合った当初、和志はシオリに程良く寄り添って、波乗りの楽しさや自分が体験した様々な物事を教えてくれた。
しかし、今ではその関係が崩壊している。
彼氏である自分を呼ぶときは“さん”付けで呼べ。俺がかわいいと思うファッションでいろ。遊びに行くときは誰と何処で会って何をするかを全部言え。
そのくせ、和志自身は自由奔放で、波乗りや雪山のためシオリを放置し、2、3ヶ月を仲間たちと一緒に県外で過ごしたり、イベントやコンパに精力的に出掛けた。
20代前半の遊び盛りなら当たり前にも思える行為かもしれないが、そうはいってもそれで振り回されている当事者はやはり苦しい。
シオリは次第に和志に対して内に溜まった反抗心を露にしてくる。
言われたら言い返し、悲しみや怒りを素直に表現するようになったシオリ。
しかし、和志はそれでも折れようとはしない。
俗に言う“逆ギレ”で、シオリを圧倒し、その反抗心を啄もうとさらに執拗な束縛を行う。
どうしようもなくなったシオリは、遂にここで浮気に走ったのだ。