聖者の行進
疲労の蓄積
「その眼の下のクマ、ひどいくない?」
化粧を落としたシオリの顔を見て、シオリの姉が笑った。
そういえば、最近、前よりも眼の下のクマがひどい。友彦と一緒に寝るときには眠れないし、仕事でもストレスが多いからだとシオリは思った。
友彦はシオリの家によく泊まりに来る。家族公認の付き合いだが、友彦の女癖とシオリの眠れない理由について、家族は知らない。
そういうことを話してしまえば、家族が交際を反対するのを知っている。
それから別に、シオリとしても“そういう状態”が苦痛であると思わないようにしていればいい。
ストレスをどこかで発散すれば、今の苦痛は乗り越えられる。
仕事が終わって友だちと遊べばいいし、家に帰ってからも眠くなるまでテレビやDVDを見ていればいい。
シオリは常にそう考え、それを実行する毎日だった。