聖者の行進
ジョージは、このシオリの悩みに対し、本当はもっと追及したかったし、話す言葉にもハッキリと理解を示してほしかった。
しかし、今のシオリに、愛とか情とか、そういった高尚な話は通用しないだろう。
また、何よりもそれで熱くなる自分自身のことを、ジョージはシオリに悟られたくなかった。
「まあ、でも、自分の好きにすればいいんじゃねーかな。俺はそういう関係が良いとは思えないけどさ」
ジョージは自分の想いを散らすように、話を締めくくる。
夜遅くジョージの働く事務所には二人しか居ない。
窓の外では、酔っ払いの陽気な歌声が響いている。
シオリは、自分自身に悩みごとの決定権を委ねられたと解釈し、この時、はじめて自分の行動を振り返った。
「うん。ゆっくり考えてみますわ。笑」
「そうだね。笑」
久しぶりに真剣に話し合う自分たちに、二人は照れ笑いした。