聖者の行進
シオリは、大切な友人の言葉に、さらに耳を傾ける。
「それで?」
「うん。でね、その後、最近までフラれたこと悩んでたけどさ。結局、自分の“思い込み”だって気付いたんだよ」
シオリは、千夏の言いたいことが、何となく分かってきた。
「じゃあ、今の私もそうなのかな」
「そうだよ。好きだって言われて、自分も好きだと思い込んでるだけ。笑」
千夏の具体的な話は、シオリに分りやすかった。
そして、それを理解した途端に、ジョージに対して徐々に抱いていた想いが、冷めていくのを実感した。
「やっぱ、自分から好きだって思える相手じゃないと、恋愛って上手くいかないだよ。笑」
自分の恋愛論を、千夏は、そう言って締めくくる。
「そうだよねぇ。私、惚れやすいから、それでいつも失敗しちゃうしね」
「そうそう。ジョージさんて、見た感じシオリと似合ってないよ。タイプでもないでしょ?」
「まあね。そうね」
シオリは、高まっていた自分の心変わりに対し、セーブを掛ける。
そして、友人の千夏からの忠告に感謝したのだった。