聖者の行進
しかし、衰弱して生気の消えかかったジョージのコトを美子は見抜いた。
今までのジョージの行い。取り巻いた全てを、美子はまんまと聞き出す。
そして、涙の枯れたジョージに代わるように、眼を真っ赤にして美子は泣いたのだ。
「苦しかったのね、、」
その単純な言葉でジョージは、聖母に出会ったような衝撃を受け、命を救われる思いを味わった。
美子にもジョージと似たような辛い経験があるから二人は共感ができた。
ジョージは暫く美子のもとに滞在し、その間だけでも彼女を慰めてあげようと“生きる決意”をした。
そして、美子は1ヶ月間ジョージを養い、恋心を振り払って「みんなのもとへ帰ってあげて」と、ジョージを眩しい夏空へ送り出したのだった。
ジョージは逃げたくなんか無かった。自分が“何も言わないでも”共感し、同情してくれる存在が近くに居てくれたらいい。
けれど、現実では近しい相手であればあるほど、ジョージは相手を思うばかりに何も言えなくなる。
初恋の彼女のように、自分のもとから突然に去ってほしくない。
誰からも必要とされるのを望んでいるわけではない。
美子のような唯一の相手に対して、永遠に“与えてあげたい”と思うからだ。