【短】雨宿り、公園のベンチ。
私がぶすっとしたまま
借りたタオルで髪や肌を拭くと
こいつの納得したように頷く動作が視界に入る。
私はそれを見て軽く舌打ちする。
「なっ!!おまっ!
女の子が舌打ちなんかするんじゃありません!」
ふざけた調子で慌てて「めっ!」と言うこいつに
「キモ……」なんてぼそっとつぶやく。
「おい、聞こえてんぞ。
……めぐむちゃーん?何でそんな不機嫌なのー?」
いつもは呼ばないくせに
急に下の名前で呼ばれて思考がとまる。
ああ、もう、
こいつの、高橋―たかはし―の、
こういうところが嫌い。
……ううん、嘘、好き。
『高橋くんのお調子者のくせに
なんだかんだ優しいところが好きー』
クラスで可愛いと言われている小牧―こまき―さんが
教室でそんなことを言ってた。
その時思った、
なんだ、私にだけじゃないのか。
そんな嫉妬心を抱いて自覚したこの気持ちは
その可愛い彼女が本日実行した、
こいつへの告白で
あっけなく結末を迎えた。