水平線の彼方に( 上 )
女子高、短大と、女性ばかりの中で五年間を過ごして、県外の会社に就職した。
そこでは密かに想いを寄せていた男性がいたけど、あっさり失恋。…理由は、その人が結婚してしまったから。
つまらなくなって、思い切って転職した先で知り合ったのが、取り引き先の営業をしていた厚…。

会社でしか会ったことのない彼と、初めて外で会ったのは居酒屋。
職場の人に誘われて、渋々参加した合コンに彼がいて、すごく安心したのを覚えている。


プライベートで会った彼は、面白くて、楽しくて、優しい人だった…。

「今度は二人だけで会おうよ」

メアドを交換して、何度か会ううちに付き合い始めた。
私より四つ年上の彼は甘え上手で、子供みたいな所があった…。
お酒が好きで、デートの締めはいつも酒場。だから、飲むのには慣れていた…。

アパートの更新を機に、一緒に暮らし始めたのが二年くらい前。
お互い『結婚』という言葉を口にしたことは、一度も無かった。
でも、そのつもりで付き合っていると信じていた…。
厚からプロポーズされるもんだとばかり思って、疑ったことなどなかった…。

……なのに、現実は違ってて…

お風呂に浸かりながら、思い出して涙が出た。
厚のことを大好きだった自分がバカみたいで、泣けて仕方なかった…。


ホントは…

今夜の砂緒里達のように、結婚の報告をしたかったのは自分だった…。

回りの友人達に、お祝いの言葉を言って欲しかったのも私自身……。

幸せそうに笑って……

お礼を言いたかったのに……。



五年という月日をかけても

私の恋は実らなかった……。

ただ、虚しさだけを残して

………散ってしまった…。
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