水平線の彼方に( 上 )
指示されるがまま作業を手伝い、出荷の準備は完了した。

「助かった。サンキュー」

軍手を外しながらお礼を言われた。

「どういたしまして…」

ハサミとテープと梱包材、渡していただけだから、大した事はしていない。
ノハラが頭に被っていたタオルを外す。結んでいたゴムが弾け飛んで、パラリと髪がほどけた。

「…ノハラの髪型って、なんかサーファーっぽいね」

直感を口にしただけなのに、ひどく驚いた顔をされた。

「何?私、変なこと言った⁈ 」

思わず聞き返した。
ゴムを拾い髪を縛りながら、いいや…と答える。

「…こっち来いよ」

いらない質問を避けるように、作業台として使っているテーブルにつかされた。

「何か考えてきたか?スピーチの内容」

間髪入れず聞いてきた。

「思い出話で良かったよね…」

確かめるようにメモ帳を広げた。酔っ払いながら聞いた話だけに、自信がなかった。

「そうだよ、何かあったか?」

覗き込む。良かった。間違ってないらしい。

「あるって言うか、私が覚えてる範囲、こんなもん」

砂緒里と平井君、それぞれに関する思い出。主に小学校や中学校時代のことを書き出してみた。

「…この犬って書いてるのは何だよ」

単語一つの物を指差された。

「ああ、これはね…」

懐かしい思い出。小学校三年生のこと……
< 33 / 92 >

この作品をシェア

pagetop