水平線の彼方に( 上 )
海を見たら心が落ち着く…って誰かが言ったけど、そんなの嘘。

大きくうねる海面や白い波を見ていると、
怒りと、悲しみと、虚しさが、交互に現れてきて、
嫌という程、心が乱れる…。

何がいけなかったの?

何が足らなかったの?

何か怒らせるようなことした…?

私、ずっと…

我慢でもさせてたの…?

考えれば考える程、落ち込んだ。
周りは騒々しく、これ以上にない程吹き荒れているのに、
心の中では暗い淵のように、ふつふつと静かに疑問だけが湧いてくる…。


立ち上がって叫んだら、スッキリするかな…。


のろりと立ってみた。
強風に押されながら、それでも足は倒れまいとする。

こんな所で死ねないと、
無意識に思っているみたいにーーー


「厚のバカー!」

「裏切るなんてサイテー!」

「大嫌いー!」

「あんたなんか、死んじゃえー!」

「アホー!!」

思いつくままに散々罵った。
これ以上にないくらい、たくさん悪口を言った。

それでも涙は枯れる事なく、いつまでも流れ続ける……。
まるで、身体中の水分が全部抜け出してしまうみたいに……。
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