水平線の彼方に( 上 )
背中を向け、目を細める。
一望できる街の先に霞む水平線…。
それを支える海を見つめたーーー

秋風が足元をすり抜ける。
ノハラは何も言い出さない。
でも、じっと私を見ている気がした……。

タンッ…。
靴音が響いた。立ち上がったノハラが声をかける。

「帰ろーぜ。お前、オレに何か奢れって言ったろ!」

充分過ぎるくらいの知らん顔。でも、変に慰められるよりマシ…。

ゴシゴシと目を擦る。そして、振り向いた。

「そうよ!運転手したんだから、ランチくらい奢ってよね!」

歩み寄って、彼よりも先を歩き出す。
後ろからついて来たノハラが、肩に手を置いた。

「…ありがとな」

短いお礼。それに頷いた…。

「…こっちこそ」

振り向かず、ノハラに肩を貸したまま。

ううん。

貸されたのは、

きっと、手の方だったーーー。
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