水平線の彼方に( 上 )
再出発の戸口に立って、不安に思っているのは私一人じゃない。
ノハラもきっと同じ不安があって、だからそれを打ち消しにいく…。

「花穂はやっと新しい恋に出会えた。それを考えたら、大進歩じゃない!後はノハラが帰って来るまで、自分の気持ちを大切にして、待ってればいいんだよ!ノハラはきっと話してくれるよ。沖縄で何を考え、これからどうしていきたいかを…」

ねっ⁈ と小首を傾げる。この仕草に、何度力づけられてきただろう…。

「うん…」

短い言葉でしか答えられないけど、確かに迷いは少なくなっていた。

私はノハラに置いてかれてるんじゃない。一緒に歩き出すことを、戸惑っているだけだ…。

「…待っとく。ノハラが沖縄から戻って来るのを」

過去に別れを告げ、歩き出す勇気をもらい、きっと、ここへ戻って来る。
それを待っていればいい。

(ノハラは…厚じゃない……)

気づいた確かなもの、それは彼も同じーーー

「じゃあノハラが帰って来たら、陽介君も含めて四人で飲もうよ!沖縄の土産話たくさん聞きながら…あっ!でも、花穂が酔っ払うといけないから、飲まないように釘刺さないとね!」
「えーっ、それってあんまりじゃない⁈ 」

飲みながらジョークを飛ばして、私達は女二人の夜を楽しんだ。
笑いながら、あの雨の日を思い出す。

全てはきっと、あの日から始まっていた。
迷いも何も感じない単なる同級生の枠を超えて、共に歩き出す相手としてノハラと出会っていた。

そこには自分達の知らない過去があり、別れがあり、涙があった。
お互いそれを語り合うことで、悲しみや辛さを癒していった。

そして、これからは、その痛みを糧として、歩き出す…。

新たな恋の相手として、お互いを見つめられるようにーーー
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