水平線の彼方に( 上 )
Act.14 水平線の彼方に
ノハラに見送られて、バイクを走らせる。
家に着いてから、砂緒里にだけは報告しておこうと思い立ち、メールを送った。

『良かったね!今度四人でお祝いしよっ!』

すぐに乾杯の絵文字つきで返信が届いた。
きゃあきゃあ言いながらはしゃぐ、砂緒里の姿が目に浮かんだ。

「ふふっ…砂緒里らしい…」

笑いながら画面を見る。そこへまたメールが入った。

『ノハラのPCアドレス教えとく。今度から二人で連絡し合って!』

頑張れ!だって。変に力が入る…。

「でも、折角だから、何か送ろうかな…」

口下手だけど、文字で語るのは好き。
新規登録したノハラのアドレスに、こんな文章を送った。


『今日は素敵なお土産ありがとう。私もいつか沖縄に行きたいな…ノハラ、連れてってくれる?』

先の約束なんて早いと思うけど、やっぱり何か伝えておきたい。
彼と一緒に、ずっと歩いて行けたら…。

「でも、やっぱ照れる…」

送ったものを今更削除することはできない。
後悔しながら返事が来るのを待った…。

「…えっ⁈ 」

バイブ機能にしていたスマホが、手の中で震えている。
まさか…と思いつつ、画面を見た…。

「………」

言葉を失くす。
食事中だと思っていたのに、彼からメールが入ってきた…。

指を震わせながら開く。こんなに緊張したのは、多分、今日が初めてだ。

『一緒に行こう。花穂を伯母さんに会わせたいから。それと…』

読んでいて、涙が溢れそうになる。
メールの中のノハラは、思っていた以上にロマンチストだった…。

『沖縄で、新しい思い出を作りたい。上書き作業を手伝ってくれよ…』



『……私で良ければ』

目を潤ませながら、返事を打った。
新しい思い出は全て、明るくて楽しいものがいい…。


少しして、返事が届く。
その文字を見て、声が聞きたくなった…。

『花穂がいい。頼むな』


頼むな…
これまで何度も、聞いてきた言葉。
彼はずっとずっと前から、私を必要としてくれた…。

「…全くもう…なんでケータイ持たないのよ…!」

ついもどかしくなった。
こんな時、声で返事したいのに…。
文字でなんて、一体、どんな風に返信すればいいのか、すっかり迷ってしまう。
送信メールの画面を見たまま、暫く考え込んでいた。

RRRRRR…!

ギクッ!とする着信音。驚いてナンバーも見ずに出た。
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