嘘恋
これでもう彼との連絡手段はなくなった。
連絡先もなければ思い出のモノも全部捨てたから。
きっともう
会うこともない。
「ごめんね!わざわざ迎えに来てもらっちゃって」
「…おー。乗れよ」
「うんっ」
微笑んで、シオンの車の助手席に乗り込んだ。
ー…ぽんっ。
「…え?なに?」
シオンはあたしの頭を軽く撫でて、何事もなかったように車を発進させた。
「…っ」
彼が何を感じたのか、わからない。
あたし、ちゃんと笑えてなかったかな。
シオンは…あたしの心が見えるみたい。
それでも、なにも言ってこないのは
何も聞いてこないのは。
その優しさに胸が苦しくなって、涙が出そうになった。
バレないように窓を眺めて歯をくいしばる。