嘘恋
「荷物ちゃんと持ってきたか?」
「持ってきたよ〜。なんか忘れてたら借りるかなぁ」
「ま、今から買いに行くからいーけど」
「ん?どっか行くの?」
「まぁな」
「…ふーん?」
しばらくし車に揺られてると、大きなショッピングセンターについた。
「何買うの?」
不思議に思ってシオンを見上げると、ふっと笑ってあたし手を取った。
「生活に必要なもの」
「え?」
「一緒に住むんだから、いろいろ揃えないとな〜」
「ふふっ。」
「…なに笑ってんだよ」
「だって…」
嬉しいんだもん。
二人でお揃いのパジャマとか、コップとか選びながら将来を夢見ることとか
こんなふうに、好きな人と一緒に住むことを想像しながら手を繋いで笑い合えることがさ。
高校生の頃は彼氏と同居なんて、遠い話だったから考えたこともなかった。
…あたし、大人になったんだなあ。
大人ってだけで、住む世界が全然違って見える。
「…ほら、行くぞ」
「はーい!」
最初に来たのは、家具とか食器が置いてあるところ。
「このお皿可愛い!」
「可愛いけどお前には小さくね?」
「はー?どういうことよ!」
「デ…」
ブフッと、言い終わる前にシオンの口を塞いだ。
「しばくよ?♡」
「…すいませんでした」
…と、なんだかんだ言いながらさっきのお皿と他にも買って
次は服屋さんに来た。
「着替えは持ってきたんじゃないの?」
「パジャマだよパージャーマ!」
「パジャマ?」
同居。つまり…
「ペアルックでしょ!」
そこらへんにあったペアのパジャマを持って、思いっきり振り返った。
「どう?どう?」
「えーこれ?やだ恥ずかしいから」
「えー?絶対似合うのに」
「こっちの方がよくない?」
「おー、いいね!」
…って、乗り気なんじゃん!
その後は、お揃いの歯ブラシと日用品をいろいろ買った。
気がつけばシオンの両手には大量の紙袋。
「ははっ、買いすぎたね!」
「そうだなー。さすがに疲れた」
「あ、じゃあすこし休んでく?」
「いや、家でゆっくりしよーぜ」
「…うん!」
時間を考えなくても、あたりまえのように一緒にいられるんだ。
これからはずっと。
「シオン!大好き!」
「…やめろよこんなところで」
と、言いながらもなんだか嬉しそうだ。
素直じゃないなぁ。
照れちゃって。
「シオンはー?」
「さぁな」
「えー?なになに?」
「…っるせぇな」
恥ずかしそうに視線をそらすシオンが可愛くて。
ついつい…
「あー。かわいい!」
つんっと彼のほっぺをつつくと
「…お前なぁ」
あたしの背にかがんで、耳に近づいてきた。
カプッ…
「ひゃ…」
「今日は寝かせないよ?」
「なっ…」
赤くなる頬を押さえると、勝ち誇ったかのようにふんっと笑った。
…生意気なやつ。
クールなシオンはいじるのは好きなのにイジられるのは好きじゃないみたい。
「んもぉ!誰かみてたらどーすんのよ」
「いーじゃん。なんなら野外でエッ…」
「ちょ、ばかばか!」
慌てて背伸びして彼の口を抑える。
人がたくさんいるのに…しかも小さい声でもないし!
「もー。恥ずかしいからやめてよっ」
「っ。ふっ」
はー?
鼻で笑い、あたしを置いて歩き出した。
「早く来いっ」
「あ、待ってよー!」
思いっきり走って、抱きついた。
「シオンだいすきー!」
「はいはい俺もだよ」
あたしがニカっと笑うと、困ったようにシオンも少し笑った。