嘘恋
十分満腹になったあたし達は、お会計をすませてお店を出た。
シオンのおごりでね。
「ほーんと食べたね!美味しかった」
「ん。また行こーな」
「うん!食べ過ぎたから歩いて消費しなきゃね」
「ベットの上で消費してもいんだぞ?」
「なっ、ばか!」
「ははっ。冗談だよ」
繋いだ手を大げさにブラブラさせながら歩く。
「あ、そういえば俺就職しようかなと思っててさ」
「働くの?」
「…将来のために色々金が必要かなぁと」
「…お?」
「な、なんだよ」
「べつにー?」
それって…結婚のことも考えてくれてるってことでいいんでしょうか。
…ほんっと可愛いんだから。
ふいに
話を続ける彼から目を離して前を見た。
日差しが照りつける中、人混みの中は窮屈で暑苦しい。
だからね、少しだけ背伸びして
次に行くお店を見渡してみたの。
蜃気楼なんて言葉があるように
この暑さだから、幻かと思ったんだ。
「…ーっ嘘。」
無意識にこぼれた呟きと、あたしを見つめる視線。
瞬間、
ばっと、慌てて下を向いた。
今まで聞いたことがないくらいの激しい心臓の音が胸を叩いた。
ほんの一瞬しか見ていない。
見覚えのある顔。
そんな、まさか。
前から歩いてくる二人組の男の人。
あたしが見間違えるはずない。
だって、
なんで
成瀬がいるの?