嘘恋
「つっても元カノなんだけどな。二個上の大学生で、明るくて誰にでも優しい能天気女」
それは噂で聞いていたから知ってる。
最近別れたばかりの人だ。
「いきなり別れようとか言われてさ。は?とか思ったよ。理由も言わねぇし泣いて話になんねぇし」
「…うん」
「…でも俺のこともうなんとも思ってないことはわかってる。サナはその日からどっかに消えたし、電話もメールの返事も途絶えたからな」
サナ。
その人が成瀬くんの元カノの名前。
成瀬くんが女の人の名前を呼ぶだけで切なくなるよ。
…ホントは、聞きたくない話。
「俺ももう忘れなきゃ、前に進めないのはわかってるんだ。いつまでも帰ってこないあいつを想ってたって仕方ないし」
すると成瀬くんがあたしをゆっくり抱きしめた。
初めて感じる彼の体温に戸惑うあたし。
「変われるかな、俺」
「…え?」
「付き合ってみる?俺と」