嘘恋
手を繋いで大げさに前後に振りながら空港へと向かう。
やっぱり…離れたくないなぁ。
一度再会してしまったら、離れたくなくなるのは当然のこと。
最後にしゃべりたいことも、伝えておきたいこともたくさんあるくせに
こんな時、でてこない。
成瀬もなにも言わないのは
あたしと同じことを思ってるからかな。
結局、一言も話さないままあっという間に空港についてしまった。
受付を済ませて、近くにあったベンチに腰をかける。
「…すっげぇ人」
「そうだね」
見渡してみれば、家族で楽しそうに笑っていたり、旅行へ行くのかワクワクしている人たちばかりがいた。
その光景に少しだけ胸が痛む。
…あたしは大好きな人と離れなきゃいけないのに、なにそんな楽しそうに笑ってんのよ。
なんて、バカみたいだけど周りを羨ましく思ってしまう。
あたしと成瀬はやっぱり無言だけど、繋いだ手は離れてない。
なにも話さなくても、お互いのことなんてお見通しだから。
ねぇ、成瀬も気づいてるでしょ?
アメリカへの便が出るとアナウンスが流れたのは、ちょうどあたしが何か言おうとした時だ。
…アメリカ。
飛行機来るの早いなぁ。
もうちょっと一緒にいさせてよ…。
「…成瀬?アメリカだって」
「…」
「…成瀬?」
呼びかけても、成瀬はどこか一点を見つめてたままで動かない。
「成瀬ってば、遅れちゃうよ?」
「…っ」
「成瀬…」
あたしの手を握る力が強くなる。