嘘恋






そっと近づいて手を伸ばす。






置いてあったのは真っ白い封筒とカギ。





このカギはここの家の鍵だ。




封筒を開けて、折りたたまれた紙をを開いてみると、成瀬の文字が書いてあった。









『香奈へ




俺は弱虫で、情けなくて
いつもお前を困らせたね。




大事な時に、寂しい時に側にいてやれなくてごめんな。
だけどお前が待ってるって言ってくれて
ほんとに嬉しかった。
突き放すようなことばっかり言ってたけど
本当はその言葉が聞きたかったんだと思う。





俺は、香奈の言葉で強くなれた。


いつだって俺の支えはお前なんだよ。




父さんの仕事を継いで

これからはもっと忙しくなって、連絡だってマメにとれなくなる。




お前を置いていくことを選んでまでこの道を選んだからには

ぜってぇ有名になっから!


これは、約束する。





この後、この家に荷物が届くよ。
なんもねぇから生活に必要なものとか送っといた。











三年後のクリスマス









ここにまた帰ってくる。








どんなに忙しくても時間作って会いに来る。





俺たち、一度もまだちゃんとしたクリスマス一緒に過ごしてなかったからさ。







その日は香奈も空けておいてほしいな。






まだ俺も研修で覚えることもやることも沢山あって、その日までは会えないと思うけど待ってて欲しい。




ちゃんと有名になって、一人前になったらお前を迎えに行くから。



そういえば香奈ちゃん
大人になってまた可愛くなってたから変な男寄ってきそうで心配だなー。




浮気すんなよ!





成瀬サンタより』










「…っばかぁ」







こんなの、いつ書いたんだろう。



全然気づかなかった。





『待ってて』



…ーうん、いつになってもあたしは待ってるよ。






有名になることが彼の夢なら、あたしは応援する。


あんなに天然で能天気だった成瀬が

手を伸ばしても届かないと思っていた夢を掴んで今、前に進んでいる。








すごいよ、ほんと。





そして、彼の言う通り
三年後のクリスマス




一緒に過ごそうね。







あたし、その約束があれば前向きに
また改めて歩き出せるよ。






浮気なんて、するわけないじゃんばか。
そんな軽い気持ちだったら今アンタのことすきなわけないっつーの。




あたしだって…かっこいいあんたのこと遠くに送るの不安なんだから。









カギを握りしめて、そして手紙を机の引き出しの中にしまい込んだ。








待ってるから迎えに来てね、サンタさん。



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