嘘恋
8月下旬の太陽はまるで火だるまのように蒸し暑い。
「メシってどこ連れてってくれるのー?」
「今日はラーメンって気分」
「え、ラーメン?やだあっつい」
「暑いからこそラーメンだろ」
ノースリーブのワンピース姿でも背中に汗が流れてるっていうのに。
それに化粧落ちちゃう!
「絶対やだ。寿司食べよーよ」
「寿司って気分じゃない俺」
「あたしもラーメンの気分じゃない」
相変わらず意見が合わないあたしたちはやっぱりかわらない。
「お前なぁ、せっかく俺が誘ってやってんのに文句言うなよ」
「それはうれしいけどお寿司がいい!」
「だだこねんな。連れてかねぇぞ」
「やー」
「…わかったよ寿司な」
「やったぁー!」
そして、相変わらず彼は私に甘いみたいだ。
「ねぇ今日はあたしおごろうか?」
「いーよ。おれ出すから」
「えー?じゃあお言葉に甘えて!」
頼んだお寿司を頬張りながらシオンに微笑みかけた。
「最初から払う気ないなら言うなあほ」
「んー?」
「…なんでもないっす」
「はーい」
そして成瀬はふっと困り顔を笑いお寿司を口に頬張った。