嘘恋
ホンキだよ
成瀬くんと付き合ってから一週間が立った。
まぁ付き合ったからといってなんの変化もない。
「なぁ香奈」
「なにー?」
「 今日さ、遊園地行かね?」
「遊園地?行く!」
「おし。じゃ放課後行こうぜ」
付き合ってから初めてのデート。
遊園地なんて…理想的すぎるっ!
これは楽しまねば。
「咲夜くーん。シャーペン失くしたから一本貸してくれないかなぁ?」
「あぁ、いーよ。つか失くすとかドジだなー」
「えへへ。ドジじゃないもーん」
イラッ。
相変わらずあたしをイライラさせるこの女。
成瀬くんの前の席で、成瀬くんのことが好きなのかやたらと話しかけてくるギャル女。
彼女が出来たからって成瀬くんは他の人に接する態度は変わらない。
や、変わってほしいわけじゃないんだけどさ?
でも、あたしに接する態度と他の人に接する態度が同じなのが
すこし…悲しい。
しかもわざわざ後ろの成瀬くんに借りなくても隣のガリ勉オトコに借りればいいのに!
狙ってんのかこのやろ。
でも、ガマン。
「どーした?顔こわいぞ」
「…成瀬くんは誰にでも優しくするんだねー」
「お?妬いてんの?」
「なっ、別に妬いてないし」
「みんなが平等じゃないよ?お前は特別に決まってんだろ」
「…変わらないじゃん。みんなと」
わざとらしく唇をつきだすと成瀬くんはクスッと笑って手を伸ばした。
「ちゅーしよっか」
「は!?」
伸びた手があたしの唇をなぞる。
な、ななな!
みんながいるのに何を言ってんの!?
「なにいきなり!?てか、先生に見られたらどうすんのよっ」
授業中ですよ、今。
小声で怒ってるあたしなんでお構いなく成瀬くんは後頭部に手を回してきた。
「えっ、ちょっと」
「大丈夫、見えないって」
イタズラに笑う成瀬くんは
机の上に自分の腕を伸ばして、枕のように頭を置き、前から見えないくらいに姿勢を低くした。
そして
あたしを下から見上げる彼は
ふっと笑ってあたしの頭を引きよせ
ちゅ…。
そっと触れるだけのキスを落とした。
「…っ!」
「顔真っ赤」
「だってっ、ホントにすると思わないじゃん!ふつう…」
「おっしゃ、やる気でたわ」
…まるで、何事もなかったかのように
成瀬くんはペンを握りノートを書き始めた。
「…ばか」
熱くなる頬を手でおさえて
あたしもペンを握った。