嘘恋






放課後、仲良く手をつないで遊園地にむかった。











「あたし、彼氏と遊園地とか初めて!」









「おっまぢで?香奈の初めてゲット〜」








「……あたしの、はじめて」








「楽しもーな!」









…成瀬くんは
誰かときたことあるのかな。





そりゃそうだよね、モテるし。


あたしがはじめての彼女なわけないもんね。





今更思いかえしたって
きっときりがないだろう。







「…わぉ」






平日だって言うのにすごい人、人、人。








「離れたら迷子になりそうだなぁ」







そう言って、繋いでる手に力が入った。







こんな些細なことがすごく嬉しくなる。


あたしも強く握り返した。









「あたし、おばけ屋敷入りたーい」









「お?香奈平気なの?」








「余裕でーす!」









今まで入ってきたおばけ屋敷で怖いって思ったことは一度もない。






あたし、結構強いんだよね。










「泣いても知らねーぞ?ここ結構怖いって有名だし」









「泣かないもーん」











…とは、言ったものの。









「…やっぱりやめない?」









「むり。もう並んだし」








「ですよね…」






怖い有名だというこのお化け屋敷は
なんだかただならぬ雰囲気を出していた。



思った以上に怖そう…。





この独特な音楽と、先が見えない入り口。


時々、大きな悲鳴が聞こえてくる。






「…ねぇ、もし腰ぬけてギックリ腰とかになったらどうする?」








「置いてく〜」







「…ひどっ」




ほんとはそんなことしないくせにね?








「あれ、香奈ちゃん。怖いの〜?」








「はぁー?ぜんっぜん怖くないっす」







なんて言ってみたものの、全く笑えてない。







「…掴まれば?」






そっと差し出された手にキュンとしたのもつかの間。




とってもありがたいのですが…


素直になれないあたしは






「いらないもん!」





強がりました。









ドキドキしてる間に順番は回ってきて





「おし、行くぞ」








「…やっぱりっ」








やめよ?と、言いたかったのですが






「はい、いこー」






「ぎゃあああああ!」










入った瞬間おもいっきりダッシュ。



むりむりむりこわいこわいこわい!





遠くで聞こえる成瀬くんの声なんておかまいなしに夢中になって走りました。






「っ…だぁ!怖かった」




1人で上がる呼吸を整えてると、つまんなそうな顔をした成瀬が後から出てきた。







「…ーお前さぁ、徒競走しにきたんじゃないんだよ?」








「たっ…楽しむもなにも、あれは怖すぎでしょ!」







「だからって俺を置いてくなー!」








「すいません…」









するとにこっと笑った成瀬くんはあたしの手を引いた。








「次、あれね」








『絶叫マシン。腰が抜ける感覚!』








「…名前からして危ないのでは?」









「おし、いこー」







「ちょっと!」









…あたしよりも、なんだか成瀬くんの方が楽しそうだ。









「やっぱ遊園地って面白いよな!」









「うん!」









成瀬くんの笑顔を見たら





あたしまでも笑顔になれるんだ。







まるで、魔法みたいに。








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