嘘恋
ある程度乗りおわり、疲れたあたし達はベンチで休んでいた。
「すっげー楽しい」
「そうだね!でも体力が持たない…」
「まだまだ早いって!」
ニコッと笑う成瀬くんはまだまだ余裕な感じだ。
さすが男子…。
「あ、あたし観覧車乗りたーい!」
「観覧車ぁ?」
「うん!このくらいの暗さだと景色キレイに見えそうじゃない?」
もうあたりも暗くなってきた。
絶叫マシンなんてもう乗りたくないし。
それに、カップルと言ったら観覧車でしょ!
あたしはこれを楽しみにしてたのだ。
「んーそうかぁ?やめよーぜ」
「え〜?なんで」
「おれ高いの苦手なんだよ」
いまさら何を言ってるんだ。
だって絶叫マシンも、ジェットコースターも乗ったのに。
いまさら怖いなんて、そんなのおかしい。
「えー?やだやだ乗りたい」
「やだって。ほら、あっちのやつのほうが楽しそうじゃん!」
そう言ってあたしの手を強引に引く。
そんな彼に違和感を覚えた。
…なんで作り笑いなんかしてるの?
「…なんかあるの?観覧車」
「んー?なんもないよ!」
…うそだ。
「ならいいじゃんっ」
「俺がやなんだって」
そんなムキになって、何もないわけがない。
きっと成瀬くんがここに一緒に来たの
元カノなんでしょ?
「…じゃあなんでっ」
「だーかーらっ怖いのムリなんだよ。ほらあれ行こーぜ!」
「…うん」
まだ元カノを好きな成瀬くんと付き合うことを選んだのはあたし。
だから、まだ想い出が残っていても
あたしがとやかく言う資格はない。
…だけど、やっぱり心が痛むよ。