嘘恋
「おー?あれ昨夜じゃね?」
ん?
ふいに後ろからそんな声が聞こえた。
成瀬くんの知り合いかな。
「ねぇ成瀬くん」
「なに?」
「うしろにいる人、知り合い?」
「後ろ?」
成瀬くんと一緒に後ろを振り返る。
「おっ!吉野」
嬉しそうにはにかむ成瀬くん。
やっぱり知り合いだったんだ。
「やっぱ咲夜じゃねーか!」
そう言って笑うのは金髪でたくさんピアスをつけているピアス男。
こんな人と知り合いなの?
ちょっと…怖い。
「おー。みんないるんだな!」
「おう!咲夜に会いたかったんだぜ?」
その金髪の隣にはキレイな女の人。
その後ろにはこれまたチャラそうな男の人が3人いた。
「お?新しい彼女?」
あたしの顔を覗き込む金髪と目が合うとニコッと笑ってきたのであたしもつられて微笑んだ。
「まぁな!」
あたしの肩に成瀬くんの腕が回る。
なっ…照れるっ。
「へー。なんかふつうだな!」
ぐさっ。
普通で悪かったわね。
「可愛いじゃん。あたしと違っておしとやかな感じでさぁ」
そう言ってくれたのはキレイなお姉さん。
「当たり前だろ〜。お前とは比べもんになんねぇから」
「うざい」
なんだかよくわからない人達に、ただただ笑うしかない。
「香奈。こいつら俺の中学時代の友達と、先輩たち。うるせーけど根はみんないいやつだからさ」
「へぇ。そうなんだ!」
…成瀬くんの中学時代はどんなんだったんだろうか。
はやく離れたいと思っていたのに急に金髪が思いついたように提案した。
「これからカラオケいかね!?」
「え!?」
カラオケ!?
あたし、今会ったばっかりなんですけれども…。
「おーいいねいいね!あたし賛成」
「俺もー」
「おっしゃ!咲夜も来るよな?」
するとあたしの方を向いて耳打ちをしてきた。
「どうする?いかねぇなら断るけど」
「断るって…」
こんなみなさんに期待の目で見られたら
断るわけにいかないでしょう。
「…行こっか」
「いいの?」
「じゃみんないこーぜー!」
歩き出すみんなと、成瀬くんは嬉しそうにじゃれ合っている。
…楽しそうだなぁ。
「香奈ちゃん、だっけ?」
「ん?」
話しかけてきたのはさっきのきれいなお姉さん。
「あ、はい!」
「あたし、ネネ。よろしくね!」
「よろしくです!」
そして、カラオケへ。