嘘恋

4月の風はまだ冷たくてマフラーと手袋をきっちりしていたあたし。

今日から高校生だ…!

髪型OK、メイクOK、服装バッチリ!

その時

ビュンって、強い風が吹いたの。

「きゃ…!」

その風のせいで、あたしの首からマフラーがはずれて、ふぁーっと飛んで行ったのです。

「え!ちょっとっ…」

慌ててマフラーを追いかけるあたし。

そして

フワッ…

「…わお」

そのマフラーはある人の頭の上に落ちたのです。

「…ん?」

「すいません!それあたしのですっ」

不思議そうにマフラーを掴む彼のところへ走り、頭を下げる。

「おおー!こんなとこまで飛んできたのかぁ!しかも俺のところに」

そういって面白そうにあたしに微笑むマフラー男。
いや、マフラー男といってもあたしのなんだけども。

「結構走ってきたの?はいどーぞ」

「………」

「ん?」

まってまって
ちょーーーイケメンなんですけど!?

こんな人間国宝級な男生で初めて見た…。

「…おーい」

「ふぁ!すみません!ありがとうございます!」

「ははっ。俺らある意味運命だったりして」

…ー運命。

「ほい」っと渡されたマフラーを受け取る。

栗色の柔らかそうな髪
切れ長で笑うとなくなる目。
高い身長にがっちりした背中。

気がつけば、手を振る彼の背中が見えなくなるまで見惚れていた。


これは…もしや…
王子様なのでは!?


…ー。

「…それで、香奈も運命感じちゃったかんじ?」
「そんな感じ★」

だって、あっちも運命感じたんだよ?
それって…ほんとのほんとに運命の人なのかもしれないじゃん!

もしかしたら今だって…この小指には見えない赤い糸が繋がってるかもしれないっ!

「でもあんだけカッコよかったら彼女いるんじゃないの?」

「えっへん。その心配ならいりません。既に把握済みですから」

香奈データによると成瀬くんは2個年上の大学生と2年間くらい付き合ってたの。
だからあたしもアタックする気になれなくてずっと陰で思い続けてたんだけどさ。

…ここ最近、別れたらしいんだよね!
これってチャンスなのでは!?

「まっ、よくわかんないけど頑張れ!」

「ありがとう!」

ミカと手を握り合ってると隣の席に、乱暴にカバンが置かれた。

「…っうるせ」

頭の上から低い声がして咄嗟に声の方を見る。

あたしをうるさいだと!?

そっと顔を上げてみると

「…っぁ」

「お?久しぶり」

な…成瀬くん!?


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