嘘恋
「どこ行くのー?」
外はジリジリと太陽が照っていて暑い。
そうだ、もうすぐ夏休みだもんね。
「どこだろーな!」
成瀬くんが乗る自転車の後ろにまたがりそっと手を回す。
なんか…緊張する。
「だめだめもっと強く捕まんないと落ちるぞー」
「大丈夫だもんっ」
「お?知らねぇぞ?」
疑問に思う間もなくおらぁー!と叫びながら思いっきりこぎ始めた成瀬くん。
「きゃあー!こわーーい!」
自然と力が入り、気がつくと締め殺しそうなくらい力が加わっていて
「おまっ…しめすぎしめすぎ」
「あ!ごめんごめん」
少し緩めて、改めて大きな背中に頬を寄せた。
少し早く聞こえてくる心臓の音。
なんだか、居心地いい。
「おーい香奈ー?」
「なーにー?」
「もうすぐだから寝るなよー?」
「わかってる!」
どこに、むかってるのかな。
いい天気。